この記事で分かること

  • 管理職に任せる仕事と判断範囲の決め方
  • 上司の支援と振り返りを計画に入れる方法
  • 役割や実務経験を整理する育成計画の記入例

管理職に仕事の配分を任せたいが、どこまで本人に判断してもらい、上司がどう支えればよいか決まっていない。そのようなときに使えるのが、管理職本人の育成計画です。

この記事では、管理職本人や候補者について、期待する役割、配置、実務経験、権限、上司の支援を計画に落とし込む方法を紹介します。管理職が部下のために作る育成計画は対象に含めません。

管理職の育成計画とは

育成計画は、期待する役割と、その役割を担うための仕事、支援、振り返りをまとめたものです。例えば仕事の配分を担う人なら、配分案を作る機会と、案を一緒に見る上司、本人が決められる範囲まで記します。

役職名が同じでも、担当する判断は職場で異なります。本人の経験と希望を聞き、会社が任せたい役割とすり合わせたうえで、今回の計画に入れる仕事を選びます。候補者については、登用を約束する計画か、経験を積みながら本人の希望を話し合う計画かも明らかにします。

育成する仕事と支援を決める理由

東京商工会議所が2026年1月に行った調査では、2025年に同所の研修講座を利用した企業の担当者3,285人に尋ね、322人から回答を得ました。中堅社員を管理職に育成する際の課題を複数回答で尋ねたところ、「上長の育成力・指導意欲が不足している」を選んだ回答は40.4%でした。会社は、上司が育成に使える時間と担う役割を確認しましょう。育成力や指導意欲の不足を本人の内面の問題と捉えるのではなく、計画には本人の仕事に加え、上司が支援する時間と内容も書き込みます。

労働政策研究・研修機構の2024年調査では、対象業種の従業員5人以上の企業に、日常業務で従業員に仕事を覚えてもらうための取り組みを複数回答で尋ねました。有効回答6,116社のうち「個々の従業員の教育訓練の計画を作る」は12.4%です。自社で計画を用意するなら、誰が何を書き、仕事にどう結び付けるかを決めます。この設問は全従業員に関するもので、個別の計画を作る取り組みを選んだ企業は回答企業の少数です。

育成計画を作る進め方

計画は、役割を決め、経験する仕事と支援を選び、振り返る順に作ります。期間と頻度の一例は、3か月間を計画期間とし、本人と上司が月1回、30分振り返る形です。業務の周期に合わせて調整してください。

1. 役割と現在の経験を整理する

経営者や部門長は、対象者に任せたい判断を仕事の言葉で書きます。「管理能力を高める」より、「チームの業務量を見て配分案を作る」と書くと、必要な経験を選べます。

本人と直属上司は、担当した仕事や判断の記録を見ながら、すでに経験したことと機会がなかったことを整理します。本人が今後担いたい仕事も聞き、会社の期待と異なる点があれば、役割や支援の条件を話し合います。

2. 仕事・配置・権限を決める

現在の部署で経験できる仕事があれば、本人が何を担当するかを決めます。例えば配分案の作成を任せ、増員や他部署への応援依頼は上司が判断する、と分けます。別部署での経験が必要な場合は、配置の決定者が受け入れ先の業務、支援者、期間を調整します。

新しい仕事を加えるときは、本人の今の業務も見ます。移す仕事があれば受け手の負担も相談し、調整が難しければ開始時期や担当範囲を変えます。

3. 研修と上司の支援を用意する

知識や練習が必要な部分には、社内の説明や外部研修を組み合わせます。例えば仕事を任せる前に外部の管理職研修で面談の進め方を学び、職場では上司が社内の業務や相談先を説明します。研修で扱う内容と、職場で任せる仕事がつながるように選びます。

上司の支援は「適宜相談」だけにせず、初回の案を見る、判断に迷った際に相談を受けるなど、内容を記します。例えば社員30〜100人で人事を兼務している会社では、期待する役割と権限を社長が決め、仕事と業務量の調整を部門長、相談と振り返りを直属上司が担います。部門長と直属上司を兼ねる場合も含め、社長は直属上司が支援する時間を予定に入れます。

4. 振り返り、次の仕事を決める

本人と上司は、作成した案や判断の理由、実施後の状況を見て、次も同じ範囲を任せるか、別の支援を加えるかを決めます。予定した仕事が発生しなかった場合や上司が支援できなかった場合は、その事情を記録し、同じ判断を経験できる別の仕事や時期を相談します。

育成計画の記入例

次の2例は架空の記入例です。いずれも先に示した期間と頻度で振り返ります。実際には本人と話し合った内容を記入します。

項目 例1:仕事の配分 例2:部下の育成
対象と期待する役割 管理職本人。チームの業務量を把握し、配分案を作る 管理職本人。部下の担当業務と必要な支援を整理する
現状と希望 自分の担当業務の予定は管理している。チーム全体の配分も担いたい 業務の説明は経験している。仕事を任せた後の支援も学びたい
配置と実務経験 現部署で毎月の業務量を集め、配分案と理由を上司に示す 現部署で部下と担当業務の進め方を話し合い、必要な支援を整理する
権限と相談 既存の体制内で案を作る。増員や他部署への応援依頼は上司が決める 担当範囲と相談先を本人・部下・上司で共有する。業務量の大きな変更は上司が決める
業務量の調整 定例資料の作成を引き継ぎ、配分案の作成時間を設ける。受け手の負担は上司が調整する 既存の報告資料を簡略化し、面談と支援の時間を設ける
上司の支援 初回の案を一緒に見て、使う情報と判断の理由を話し合う 初回の面談前に進め方を相談し、部下が困ったときは上司にも相談できるよう伝える
振り返り 毎月、配分案、修正理由、実施後に残った仕事を見る 毎月、担当業務の進み具合と、用意した支援が足りていたかを見る
機会がない場合 配分時期が延びたら、次回の予定を決め、過去の案を使って検討する 対象業務が変わったら、部下と上司が相談し、別の業務で必要な支援を整理する

例2では、部下にも仕事の目的と相談先を伝え、必要な支援を受けられるようにします。管理職の経験を用意する際も、部下が通常の仕事を進めるための条件を整えることが前提です。

運用するときの注意点

育成計画を評価に使う場合は、何を見てどう扱うかを事前に本人へ伝えます。予定した仕事や権限、支援が用意されなかった事情は、本人の取り組みと分けて扱います。

まとめ

管理職の育成計画は、期待する役割を決め、本人の経験と希望を確認するところから作ります。その上で、任せる仕事と権限、上司の支援、振り返りに使う資料を決めます。予定した経験ができないときは、仕事や支援の条件を見直します。

社員研修については、任せたい仕事を伺い、進め方の見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。

出典

出典

  1. 支える主張2・9ページ:調査対象と中堅社員の管理職への育成に関する課題。

    人材育成担当者の新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査 集計結果東京商工会議所・参照 2026-11-03
  2. 支える主張調査概要・6ページ図表1-5:企業調査と日常業務における人材育成の取り組み。

    人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査労働政策研究・研修機構・参照 2026-11-03
  3. 支える主張相談の案内先。

    お問い合わせ株式会社Mario Rossi・参照 2026-11-03