この記事で分かること

  • 管理職の判断場面から研修内容を選ぶ手順
  • 仕事の依頼や進捗把握を扱う単元の例
  • 研修後に上司と仕事を振り返る方法

管理職研修の科目を選ぼうとすると、部下への仕事の任せ方も、進捗の把握も、どこまで扱えばよいか迷う。そんなときは、先に科目名を並べるより、本人が職場で担う場面から考えると、限られた時間に何を入れるか選びやすくなります。

この記事では、新任・現任の管理職に向けて、場面と役割を整理し、演習と研修後の振り返りまでをつなぐカリキュラムを紹介します。半日・1日・複数回の編成例も示します。

管理職研修のカリキュラムとは

カリキュラムは、誰を対象に、何を、どの順番で学び、職場でどう使うかをまとめた計画です。「部下育成」「進捗管理」といった科目名に、到達目標、演習、作る物、研修後に見る人を添えます。

管理職が担う仕事には、チームへの仕事の配分、進捗の把握、部下の育成や相談への対応があります。人員配置や評価について自分で決められる範囲は会社によって異なるため、自社の権限と相談先に合わせて内容を選びます。

場面から組む理由

管理職が実際に判断する場面から組むと、自社の権限や仕事に合った題材を選び、職場で使うやり取りを練習できます。

労働政策研究・研修機構が2019年から2020年にかけて管理職50人に行った聞き取りでは、業務の進捗を共有し、仕事の分担が偏らないよう工夫する例が紹介されています。研修を組む際は、自社で誰がどの情報を受け取り、どこまで配分を変えられるかを題材にできます。この調査は対象者の事例を扱うもので、管理職全体の割合や演習の効果を示すものではありません。

高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「令和8年度生産性向上支援訓練カリキュラムモデル」88頁には、管理者の役割や組織力を扱い、情報伝達のロールプレイングを含むコースがあります。知識の説明に加えて、実際のやり取りを練習する時間を設ける際の参考になります。

カリキュラムを組む4つの段階

  1. 場面と役割を集める。 管理職本人と上司から、日々の判断と迷う場面を聞き、本人が決めることと相談することを一覧にします。
  2. 優先する場面を選ぶ。 起こる頻度や影響、研修で扱える範囲を見て、時間内に練習できる数に絞ります。権限や制度を決める課題は会社側の検討に回します。
  3. 単元を組む。 選んだ場面ごとに、到達目標、演習、作る物、見る人を決めます。
  4. 職場での実践を決める。 受講者が試す仕事と相談相手を記入し、上司と振り返る日を予定に入れます。

社員30〜100人で人事を兼務している会社では、次のように分担できます。社長は研修の優先課題と判断権限を決め、部門長は現場の場面集めと研修後の振り返りを担当します。人事を兼務する人は一覧と日程をまとめ、講師への共有窓口を持ちます。講師を社内で務める場合は、準備に使う時間も通常業務の予定に入れます。

段階ごとの記入例と単元表

1. 場面と役割の一覧

以下は、架空の会社を想定した記入例です。管理職の仕事と会社が決めることの境界を、社長や部門長と話し合う材料にします。

迷う場面 管理職が担うこと 上司・会社に相談すること
新しい仕事を誰に任せるか 各人の担当と期限を把握し、依頼先を考える 優先順位の変更や人員の追加が必要な場合
予定より進捗が遅れている 遅れの状況と影響を聞き、担当内の調整案を作る 納期の変更や他部署の応援が必要な場合
育成の時間を取りたい 本人と仕事の予定を見ながら練習する機会を設ける 業務量の調整や研修参加の判断が必要な場合

2. 優先順位と到達目標

例えば、新任者が複数おり、仕事の配分を考える場面が毎週あるなら、仕事の依頼と進捗の把握を優先します。到達目標は「進捗が遅れた仕事の状況を聞き、調整案を考えられる」のように、演習で見られる行動にします。

異動や増員の決定権が管理職にない場合、その決定を研修の到達目標には置きません。管理職が状況を整理して上司に相談するところまでを扱い、会社側は相談を受けた後の判断者を決めます。

3. 管理職研修のカリキュラム例

次の単元表は、場面に応じて選んで使う一例です。時間は休憩を除く目安で、研修モデルの所要時間を示すものではありません。

単元・時間の一例 到達目標 演習 作る物 誰が何で確かめるか
役割と判断範囲・30分 自分で決めることと相談することを分ける 仕事の場面を判断範囲ごとに分ける 役割一覧 上司が一覧を実際の権限と照らす
仕事の依頼・60分 目的・期限・相談方法を伝える 依頼する側と受ける側を交代して会話する 依頼時に伝える事項のメモ 演習相手が聞き取った内容と不明点を返す
進捗と仕事の配分・60分 状況を聞き、調整案を考える 遅れのある仕事と他の担当の予定から対応を考える 状況と調整案のメモ 講師が判断に使った情報と相談先を見る
問題解決・60分 事実と原因の仮説を分ける 仕事の遅れについて、追加で集める情報を考える 事実・仮説・調べることの一覧 受講者同士が一覧を読み、不足する情報を尋ねる
職場での実践計画・30分 試す仕事と相談相手を決める 自分の予定に沿って実践する場面を選ぶ 実践予定 上司と本人が実施できる仕事か話し合う

仕事の依頼の演習では、受講者が表の到達目標に沿って依頼を伝え、途中で相談してほしい条件も説明します。相手は聞いた内容を自分の言葉で返し、不明な点を質問します。役を交代した後、それぞれが職場で伝える事項をメモにまとめます。受講者が1〜2人の場合は、講師が相手役を務めます。

時間に合わせた組み方は、次のように考えられます。いずれも一例です。説明と演習を含む時間で、休憩は別に取ります。

実施時間 単元数と組み合わせ 時間配分の一例
半日・3時間 4単元:役割、依頼、進捗、実践計画 30分+60分+60分+30分
1日・6時間 5単元:上の表の全単元 役割30分、依頼90分、進捗90分、問題解決120分、実践計画30分
複数回・2時間×3回 計5単元:第1回に役割と依頼、第2回に進捗と問題解決、第3回に実践の共有と計画 第1回30分+90分、第2回60分+60分、第3回は共有90分+計画30分

1日の例では、半日より依頼や進捗の演習に時間をかけ、問題解決も加えます。問題解決は単元表の60分を基本とし、1日の例では120分に延ばします。複数回の例では、第1回と第2回の間に職場で試す機会を置き、第3回でその経験を持ち寄ります。受講者が試す仕事を選べるよう、上司にも日程を知らせておきます。職場で試す際は、部下にも目的を伝えます。

4. 研修後の振り返り

一例として、研修の2週間後に本人と上司が30分話します。本人が試したことと相手から返ってきた内容を整理し、次に変える点を一つ決めます。試せなかった場合は、対象の仕事があったか、時間や権限が足りていたかを一緒に見ます。上司が会社の判断を要する課題を持ち帰り、必要に応じて社長や人事兼務者に伝えます。

研修直後の感想は、説明や演習の進め方を改善する材料に使えます。職場で何が起きたかは、上司との振り返りで別に扱います。

実施するときの注意点

新任管理職には役割や相談先を整理する時間を取り、現任管理職には経験した判断を持ち寄って選択肢を検討する時間を設けます。同じ役職でも担当する仕事や部下の人数は異なるため、演習の前提を共有します。

職場の事例を使う際は、個人や取引先を特定できる情報を外し、話した内容の共有範囲を先に決めます。本人が話したくない内容は求めず、担当者が用意した共通の題材も使えるようにします。

仕事が集中している、必要な権限がない、相談先が定まっていないといった課題は、研修に加えて会社が業務配分や判断の仕組みを整えます。受講者の工夫だけに対応を委ねないことが大切です。

まとめ

管理職研修のカリキュラムは、まず自社の管理職が担う仕事と、判断に迷う場面を確認するところから組み立てます。優先する場面を絞り、到達目標、知識、演習、職場での実践と振り返りをつなげます。

調査や研修モデルは、扱う能力や演習を考える参考になります。自社の管理職が決められる範囲と、実際に試せる仕事に照らし、誰が何で確かめるかまで決めておきましょう。

社員研修については、任せたい仕事を伺い、進め方の見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。

出典

出典

  1. 支える主張相談の案内先。

    お問い合わせ株式会社Mario Rossi・参照 2026-11-03
  2. 支える主張88頁:管理者の役割、組織力、情報伝達演習。

    令和8年度生産性向上支援訓練カリキュラムモデル高齢・障害・求職者雇用支援機構・参照 2026-11-03
  3. 支える主張ウェブ版「研究の方法」「主な事実発見」:管理職への聞き取りと職場管理上の工夫(頁番号なし)。

    管理職ヒアリング調査結果―管理職の働き方と職場マネジメント―労働政策研究・研修機構・参照 2026-11-03