この記事で分かること
- 企業が挙げた管理職候補の育成課題
- 現任の部長が挙げた育成や評価の悩み
- 聞いた課題に応じた研修や制度変更の選び方
次の管理職候補を考え始めたものの、希望する人がいるか分からない。そんなときは、候補者への説明と、現任の管理職が仕事で直面する課題を分けて見ます。
この記事では、企業の人材育成担当者と現任の部長を対象にした二つの調査を手がかりに、課題を聞く質問と、研修・制度変更の選び方を紹介します。
調査の条件
東京商工会議所の2025年調査は、同所の研修講座を利用した企業のうち、回答した377社に管理職候補の育成課題を尋ねたものです。産業能率大学総合研究所の2021年調査は、従業員100人以上の上場企業に勤務し、部下を持つ部長385人に本人の悩みを尋ねています。
企業側と部長本人では立場も質問も異なるため、割合を直接比較せず、それぞれ自社で何を聞くか考える材料にします。
二つの調査から見える全体の傾向
企業側の調査では、管理職を希望する中堅社員の少なさ、上長による育成、候補者の不足が上位に挙がりました。現任の部長の調査では、部下の育成、人事評価、業務量が悩みの上位です。候補者を選ぶ前後の課題と、就任後の仕事上の悩みをそれぞれ扱うことが出発点になります。
管理職候補を育てる企業側の課題
東京商工会議所の2025年調査では、377社への複数回答で「管理職になることを希望する中堅社員が少ない、以前よりも減った」が34.5%でした。候補者には職名に加え、役割、権限、仕事量、相談先を示し、希望や知りたいことを聞きます。管理職を希望しないという答えも、本人の選択として受け止めます。
「上長の育成力・指導意欲が不足している」は32.1%でした。上長が指導に使える時間と、会社が期待する役割を調べ、必要に応じて仕事の配分を変えます。育成力や指導意欲を本人の能力や内面だけの問題とせず、時間と役割の面から捉えます。
「管理職候補になる人材が育っていない・対象者がいない」は29.7%でした。候補者に求める役割を整理し、その経験を積む機会があるかを見ます。例えば会議の進行を任せる場合は、本人に目的を伝え、支援する上司も決めます。
現任の部長が挙げた悩み
産業能率大学総合研究所の2021年調査では、部長385人への複数回答で「部下がなかなか育たない」が39.5%でした。任せたい仕事と、そのために必要な支援を管理職と担当する社員の双方に聞きます。この回答だけで部下個人の能力の問題とは断定できません。
「部下の人事評価が難しい」は25.2%でした。評価基準が曖昧なのか、基準を使って伝える場面に迷っているのかを分けて聞くと、制度の説明と練習のどちらが必要か選べます。
「職場の(or自分の)業務量が多すぎる」は21.0%でした。本人の仕事と職場全体の仕事を分けて洗い出し、優先順位や分担を調整します。原典では、職場と本人のどちらを指して選んだかは区別できません。
自社の課題を聞き、対応を選ぶ
以下は、課題ごとに聞くことと対応を選ぶための記入例です。回答は一例であり、本人の話を聞いてから判断します。
| 課題 | 聞く相手 | 聞く質問1つ | こう答えたらこの対応 |
|---|---|---|---|
| 候補者が役割を判断しにくい | 候補者 | 「管理職の役割について、何を知りたいですか」 | 「判断できる範囲が分からない」なら、会社が権限と相談先を説明する |
| 評価の伝え方に迷う | 現任の管理職 | 「評価のどの場面で迷いますか」 | 「基準は分かるが面談での伝え方に迷う」なら、架空の事例で面談を練習する研修を行う |
| 評価基準が曖昧 | 現任の管理職 | 「評価基準のどこが使いにくいですか」 | 「成果の基準が職種に合わない」なら、制度を決める責任者が基準を見直す |
| 育成の時間が取れない | 指導する管理職 | 「指導の時間を取りにくいのは、どの仕事が重なるときですか」 | 「月末の集計と重なる」なら、部門長が期限や分担を調整する |
説明や面談の進め方を練習する課題には研修を使えます。権限、評価基準、仕事量の問題は、制度や業務を決める人が変更します。両方が必要な場合は、先に変更する内容を決め、その後に新しい基準を使う練習を組み合わせます。
社員30〜100人の会社で人事を兼務している場合、聞く日程と決まった対応を人事の担当者がまとめる方法があります。例えば、役割と評価基準の変更は社長が決め、仕事の分担と指導時間は部門長が調整します。指導役は本人と仕事の進め方を話し合います。聞いた内容の共有先と使い道は、聞く前に本人へ伝えます。
進め方の一例は、最初の2週間で候補者と現任の管理職に各30分ずつ話を聞き、次の1週間で責任者が対応を決める方法です。研修や業務変更を行った4週間後に、関係者へ実際に使えたかを聞き、必要な支援を見直します。
調査の出典・対象・方法
東京商工会議所は、2020年4月から2025年2月に同所の研修講座を利用した5,777社を対象に、2025年3月にウェブ調査を実施し、377社が回答しました。回答率は6.5%で、回答者は主に各社の人材育成や研修の担当者です。研修利用企業を対象とした調査であり、全国の企業の代表値としては扱えません。
産業能率大学総合研究所は、従業員100人以上の上場企業で部下を1人以上持つ部長を対象に、2021年9月にインターネット調査を実施しました。有効回答は385人です。中小企業の管理職にも同じ割合で当てはまるとは限りません。
まとめ
候補者の希望、現任の管理職の悩み、部下に任せる仕事は、同じ「管理職育成」でも確認する相手が異なります。調査を出発点に、自社の役割、仕事の進め方、本人の希望を確かめ、教育と業務上の調整を組み合わせて検討しましょう。
研修や育成の進め方について、任せたい仕事を伺い、見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。
出典
- 企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査集計結果(東京商工会議所、2025年)
- 第2回 上場企業の部長に関する実態調査(産業能率大学総合研究所、2022年)
出典
支える主張調査対象と結果を本文に記載。
企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査集計結果支える主張調査対象と結果を本文に記載。
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