この記事で分かること
- 個人とチームで異なるAI利用後の速さの実感
- 情報通信業の社員が感じるAIの仕事への影響
- 労務担当者は社員ごとの判断に人が必要と回答
中小企業でAIを使う人に聞くと、自分の作業が速くなったと答えた人より、チーム全体が速くなったと答えた人の方が少なかった、という調査が出ました。個人の手元の作業が速くなっても、その先の受け渡し・学ぶ時間・人の判断は、会社が別に段取りする必要があるのではないか。それを考える材料として3件を整理します。
取り上げるのは、2026年10月17日〜11月3日に発表された国内の民間調査です。いずれも対象を限ったインターネット調査で、回答者の認識に基づくため、日本の職場全体や実測した効果を示すものではありません。
1.TANKA:自分の作業が速くなった64.2%、チーム全体は51.8%
TANKA Incは2026年10月16〜19日、従業員100人未満の企業で生成AIを業務に使う会社員・経営者・役員500人に調査しました。自分の作業が速くなったと答えた人は64.2%、チーム全体の仕事が速くなったと答えた人は51.8%でした。TANKA Inc「中小企業の生成AI活用実態白書 2026年版」調査概要
数字の差から、どの仕事のどこで時間がかかっているかまでは分かりません。それでも、個人の手元の作業と、その後に続くチームの仕事は分けて見ることを勧めます。
たとえば、問い合わせへの回答案を担当者がAIで作っても、回答を送るまでには、内容を読む人や承認する人とのやり取りがあります。担当者が案を作るまでの速さと、問い合わせを受けてから返答するまでの流れは別のものです。個人の感想だけを聞いて終えると、次の担当者に渡す時の事情は見えないままかもしれません。
次に問い合わせ対応を振り返る時、担当者と承認者で同じ案件を1件選び、回答案を作ってから返答するまでの受け渡しを順に書き出します。待ち時間があれば、何を待っていたのかも記します。判断に必要な事情が渡っていなかったなら何を添えて渡すかを、承認の順番待ちが長かったなら承認する側の段取りを、それぞれ決めます。
2.PE-BANK:AIの影響を感じる人75.0%、学ぶ時間をどこで取るか
PE-BANKは2026年10月17〜19日、全国の22〜60歳の情報通信業に従事する会社員300人に調査しました。生成AIの普及が現在の仕事・職種に「非常に大きな影響がある」「ある程度影響がある」と感じる人は合わせて75.0%でした。一方、業務時間外にIT・デジタル関連の学習やスキルアップに現在取り組んでいる人は38.3%でした(PE-BANK調べ)。PE-BANK「IT人材のリスキリング実態調査」
回答者は情報通信業の会社員に限られ、38.3%は業務時間外の学習だけを尋ねた数字です。影響の感じ方と、どこで学んでいるかは、別々に尋ねられています。時間外に学んでいない理由までは、この調査は尋ねていません。
社員が必要な知識を得る場所を、時間外の勉強に頼らず、業務の中に用意することを勧めます。
次に業務用のAIを使う仕事を決める際、上司は担当社員と業務時間内に30分を取り、その仕事に使う資料で試し、分からなかった点と相談先を書き留めます。たとえば社内向けの手順書の下書きを題材にするなら、入力してよい情報や、元の手順と照らす場所もその場で話します。試した結果、使い方や情報の扱いに迷いが残れば、担当社員だけで結論を出さず、社内の担当者と次の進め方を決めます。
3.キヤノンマーケティングジャパン:AIがあっても人が担う仕事に「個別の判断」55.7%
小さな会社では、休暇や手当の相談のように社員ごとの事情を聞いて決める仕事を、総務の兼務者や社長が抱えている会社もあるでしょう。その仕事にAIをどう使うかについて、大企業の労務担当者に聞いた調査があります。キヤノンマーケティングジャパン株式会社は2026年8月26〜28日、従業員1,000人以上の企業で労務業務を担う責任者・担当者106人に調査しました。業務負荷への対応として「生成AIの活用」を挙げた人は52.8%でした。また、生成AIがあっても人が対応する必要があると思う業務として「従業員ごとの事情に応じた個別の判断」を挙げた人は55.7%でした。同社の調査発表(出典:キヤノンマーケティングジャパン)
回答者は従業員1,000人以上の企業の担当者で、会社の規模は違います。それでも、AIを使う部分を決めるだけでは、例外が出た時に誰が判断するのかは決まらない、という点は小さな会社にも当てはまります。
総務の担当者と、判断を受け持つ人(社長、または総務の責任者)で、休暇の申請についてよくある問い合わせを1件取り上げ、定型の案内で済む部分と、事情を聞いたうえで判断する部分を分けてみます。事情を聞く範囲と、聞いた中身を知る人もその場で決め、社内の規程と照らしてから運用に移します。
会社で確かめておきたいこと
- AIを使っている仕事を1つ選んだ時、本人が作業するところから次の担当者に渡り、仕事が終わるまでの流れを把握していますか?
- 社員がAIを使う仕事を学ぶ機会は業務の中にありますか? 分からない時の相談先は決まっていますか?
- 社員ごとの事情を聞いて決める仕事で、定型の案内で済む部分と、誰かが判断する部分を分けていますか?
3つの問いのうち、答えが分かれた仕事を1つ選び、関わる人と話すところから進めます。
職場でAIを使う仕事や育成の悩みを伺い、どこから取り組むか、研修で何を扱うかの見立てをお返しします。オンラインで受け付けます。
出典
支える主張従業員100人未満の企業で生成AIを業務利用する500人のうち、個人の作業が速くなったと答えた人は64.2%、チーム全体は51.8%。
中小企業の生成AI活用実態白書 2026年版支える主張情報通信業の会社員300人の75.0%が生成AIによる仕事への影響を感じ、38.3%が業務時間外にIT・デジタル関連を学習中と回答。
IT人材のリスキリング実態調査支える主張従業員1000人以上の企業の労務責任者・担当者106人の調査で、業務負荷への対応として生成AI活用は52.8%、人が対応する必要がある業務として個別の判断は55.7%。
労務業務負荷実態調査2026支える主張調査発表の利用条件に基づく発行元リンク。
キヤノンマーケティングジャパン支える主張相談先。調査の根拠資料ではない。
株式会社Mario Rossi 研修



