この記事で分かること

  • 指導役の時間を通常業務から振り替えて確保する方法
  • 異動した人に教える仕事の順番と記録の例
  • 進みが遅い時に部門長が見直すこと

異動してきた人に仕事を引き継ぐことになり、指導役を決めました。しかし、その人にも普段の担当業務があり、何を先に教え、どこまで伝えたかが曖昧なままでは、指導の予定を組めません。

OJTを始める前に、指導役が使える時間、教える仕事の順番、できたことを残す方法を決めます。この記事では、その3つを一枚の計画表にする進め方を紹介します。新卒の人、中途入社の人、異動した人のいずれにも使えます。

OJTの目的と範囲

OJTは、実際の仕事を通じて、必要な知識や進め方を身につける指導です。指導役が仕事を見せ、本人が取り組み、結果を一緒に見ながら次に任せる範囲を決めます。質問にその都度答えることも大切ですが、計画には、それに加えて誰が何をいつ教えるかを置きます。

目標は、仕事を一人で抱えることではありません。通常の仕事を進め、判断できない場面では適切な相手に相談できる状態を目指します。担当する仕事や経験が違えば、教える順番も必要な支援も変わります。

入社前後の準備から配属後までの全体計画は、オンボーディングプログラムの作り方で扱っています。

指導の時間と仕事を先に決める

厚生労働省が2025年10月に、常用労働者30人以上を雇用する7,194事業所を対象に行った令和7年度「能力開発基本調査」では、2024年度に正社員へ計画的なOJTを実施した事業所は60.6%でした。有効回答率は54.2%です。自社でも実施の有無に加え、指導に使える時間と、実際に扱う仕事を予定に入れます。出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」22頁

計画的なOJTと入社時教育の記録については、入社時教育マニュアルの作り方でも紹介しています。指導役の予定が埋まっていれば、計画を書いても実際には教える時間を取りにくくなります。部門長は指導役を指名すると同時に、その人が担当する通常業務の量や期限も調整します。

また、教えた内容を指導役の記憶だけに置くと、休みや担当交代の際に続きを決めにくくなります。記録には、教えた日付だけでなく、本人が実際に行った仕事と、次に扱う部分を残します。

OJTを進める順番

  1. 本人に任せる仕事を選び、完了までに何を行うか、どこで相談するかを整理します。
  2. 指導役と部門長が予定を見て、指導の時間と、その時間に減らす通常業務を決めます。
  3. 仕事を小さく分け、前提になる作業から順に並べ、各作業で見る結果を決めます。
  4. 本人と計画を共有して仕事に取り組み、実際にできたことと次に扱うことを記録します。
  5. 仕事の結果と本人の質問をもとに、次の作業へ進むか、教え方や時間を調整するかを決めます。

指導役の時間を予定に入れる

指導の時間には、説明する時間だけでなく、本人が行った仕事を見る時間と、その結果を伝える時間も含めます。先に指導役の予定を押さえ、その分の通常業務を誰が引き受けるか、期限を動かせるかを部門長が決めます。仕事を減らせない場合は、指導の開始日や担当を調整します。

一例として、週に2時間をOJTに充てるなら、仕事を一緒に行う時間を60分、結果を見て話す時間を30分、準備と記録に30分に分けます。指導役が通常業務を同じ時間内に終える前提にはせず、部門長が定例業務の一部を別の人に振り替えます。実際にかかる時間は仕事の頻度や危険性に合わせて調整します。

予定した仕事が発生しない週には、指導役と本人で次の実務の予定を決めます。繁忙や休暇で指導役が対応できない場合に備え、本人が相談できる別の担当者も決めます。その担当者には、今どこまで進んでいるかと、本人に任せている範囲を共有します。

指導の予定は、指導役と本人の双方の予定に入れます。本人が実務に取り組む時間にも別の仕事を重ねると、教わった直後に試す機会を取りにくくなります。部門長は両者の仕事の予定を見て、指導と実践に充てる時間を調整します。急な仕事で予定を変更した場合は、次に指導する日時を決め、計画に書き直します。

会社の人数に合わせた担当の分け方

社員30〜100人で人事を兼務する会社では、部門長が時間と通常業務を調整し、指導役が教えて記録し、部門をまたぐ調整は社長が判断します。人事担当がいる会社では、部門間の記録の置き場と引き継ぎを人事がそろえます。

いずれも役職名だけで終わらせず、実際に担当する人の名前と、判断を引き受ける範囲を計画に書きます。

教える順番と記録の例

仕事を並べるときは、完成形から逆に考えます。何ができればその仕事を終えられるかを書き、そこに至るまでの作業を分けます。そのうえで、先に知っていないと後の判断ができないこと、間違いが大きな影響につながることを先に扱います。

例えば、出荷業務なら、出荷する品物と指示書を照らす作業が、梱包や発送の前提になります。通常の処理を練習した後に、数量が合わない場合などの例外を扱います。安全に関わる作業や承認が必要な判断は、実務を任せる前に、その職場の手順と責任者を明らかにします。

次は、出荷業務の経験がある人が別の部署から異動した場合の計画の一例です。毎週、実務を一緒に行う60分と結果を話す30分に加え、指導役が準備と記録に30分を使います。

順番・教える仕事 指導役の時間 本人が行うことと見る結果 記録すること 次に進む条件・相談先
1 品番と数量の照合(2週間) 毎週、実務60分・対話30分・準備と記録30分 経験のある照合作業を行い、会社固有の品番の扱いを見る。共通する手順の説明は短くする 照合した仕事と会社固有の手順で扱った点 通常の照合を一緒にできたら梱包へ。不一致は指導役に相談
2 梱包と表示(2週間) 毎週、実務60分・対話30分・準備と記録30分 この会社の基準で梱包し、送り先の表示を付ける 梱包した仕事と、表示を見直した結果 通常の梱包と表示を手順どおりにできたら例外へ。迷いは指導役に相談
3 数量が合わない場合の連絡(1週間) 毎週、実務60分・対話30分・準備と記録30分 練習用の指示書で差を整理し、連絡内容を伝える 差を伝えられたことと、次の実務で扱う点 差を修正する前に出荷責任者へ相談できれば、次の実務でも試す

この例では計5週間、指導役の時間は週2時間で合計10時間です。部門長は、その時間に当たる通常業務を振り替えます。指導役自身が教え方に迷う場合は、教え方を練習する研修を指導役向けに組むこともできます。経験の有無だけで任せる範囲を決めず、仕事の結果を見て調整します。

記録は「指導済み」に丸を付けるだけでは、次に何を任せられるか分かりません。「品番と数量を照らせた」「差があるときに処理を止めて相談できた」のように、実際に見た行動と結果を書きます。まだ試す機会がなかった場合は未実施と残し、次に機会を設けます。

基準に届かなかった場合は、手順のどこで迷ったかを聞き、指導役の説明や用意した資料を見直します。次に一緒に扱う作業と、誰が時間を確保するかまで決めて記録します。指導役が交代する場合は、前任者がその記録を渡し、次に扱う仕事と相談先を後任者に伝えます。本人にも担当交代を知らせ、相談先が変わる時期を共有します。本人が記録を読み、事実と違う箇所があれば伝えられるようにします。

進めるときの注意点

OJTの記録は仕事の習得と次の指導を決めるために使い、質問や相談を不利益な評価の材料にしません。記録には業務に必要な事実を残し、閲覧する人と保存先を決めて本人に伝えます。

指導役が不在でも仕事が止まらないように、本人に任せる範囲と代わりの相談先を周囲にも知らせます。安全に関わる作業や取引先への連絡は、計画表に書いただけで任せず、その職場の手順と承認の範囲に沿って進めます。

仕事の発生頻度や必要な支援は人によって異なります。予定より進みが遅い場合は、仕事に取り組む機会、指導役の時間、説明の内容を部門長が見直します。

まとめ

OJTは、指導役を決めた後に、時間、教える順番、記録を具体にすることで進めやすくなります。通常業務との調整を部門長が引き受け、仕事を小さく分け、実際にできたことを本人と共有しましょう。

計画は作って終わりにせず、仕事の結果をもとに次の作業と支援を決めます。新しく入った人にも異動した人にも、その人の経験と任せる仕事に合う計画を使います。

職場で教えたい仕事と、指導役の状況を伺い、どこから教えるか、研修で何を扱うかの見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。

出典

  1. 支える主張正社員に対する計画的なOJTの実施事業所割合。

    令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要厚生労働省・参照 2026-11-03
  2. 支える主張事業所調査の対象、調査時期、有効回答率。

    令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します厚生労働省・参照 2026-11-03
  3. 支える主張計画的なOJTの実施状況を尋ねた対象期間。

    令和7年度能力開発基本調査 事業所票厚生労働省・参照 2026-11-03
  4. 支える主張計画的なOJTの定義。

    令和7年度能力開発基本調査 用語の説明厚生労働省・参照 2026-11-03
  5. 支える主張問い合わせの案内先。

    お問い合わせ株式会社Mario Rossi・参照 2026-11-03