この記事で分かること

  • 対象者と回数から研修の年間予算を積み上げる順序
  • 金額を記号と式で書く予算表の記入例
  • 公的調査の1人当たり費用を見直しに使う方法

来年度の予算を決める時期になり、各部署から研修の希望が届きました。管理職向けの外部研修と、社内で行う共通研修がありますが、どの費用を足せば年間の枠になるのか迷う場面です。

社員研修の予算は、対象者と実施回数を決め、外部への支払いと社内で準備する費用を積み上げて作ります。公的調査の1人当たり費用を参考にしながら、ひとつの会社の予算表で、年間にいくら確保するかを決める手順を説明します。

研修予算は何を決めるものか

年間の研修予算は、その年に実施する教育のために会社が確保する費用の枠です。研修会社への支払いだけでなく、社内研修の教材や会場、外部講座の受講料など、実施に伴う支出も含めて考えます。

予算表に入れるのは、仕事を離れて行う研修に必要な費用です。調査のOFF-JTは、業務命令に基づいて通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練を指します。社内の講師が話す集合研修も含めます。日々の仕事をしながら教える時間や、本人の自己啓発への支援は、会社の管理方法に応じて別に記録します。社内担当者の人件費を支出枠に入れるかどうかも最初に決め、後から同じ費用を二重に足さないようにします。

枠の金額と同じくらい大切なのは、その金額で誰が何を受けられるかです。研修名だけを並べると、参加人数が決まらず受講料を見積もれません。反対に、全社員に同じ額を割り当てると、対象者が限られる研修や全員が参加する研修を計画に落とし込みにくくなります。

公的調査の数字は、積み上げた額を見直す参考に使う

厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」(常用労働者30人以上の企業7,452社が対象・2025年10月実施・有効回答率52.6%)によると、令和6年度の1年間にOFF-JTに費用を支出した企業の、労働者1人当たり平均額は2.0万円でした。費用を支出した企業についての平均で、受講者1人当たりの料金や、各社が支出すべき額ではありません。出典:厚生労働省「調査結果の概要」2ページ・図4・調査の概要

自社の労働者数にこの額を掛けて比較用の参考値を出し、予算そのものは、予定する研修の対象者と回数から積み上げます。

一例として社員80人の会社では、2.0万円×80人=160万円が比較用の参考値です。必要な年間予算は、次の表で研修ごとに積み上げて決めます。

年間の研修予算を決める順序

  1. その年に扱う仕事上の課題を挙げ、研修の対象者と人数を決めます。
  2. 対象ごとに、外部で学ぶ内容と社内で扱う内容、実施回数を決めます。
  3. 外部への支払いと社内研修に必要な支出を、それぞれ計算します。
  4. 合計を公的調査の参考額や会社の支出予定と照らし、実施する範囲を決めます。
  5. 実施後に予定と実績を記録し、次の年度の見積もりに使います。

予算表の記入例

次は、社員80人の会社が年間の研修費用を決める一例です。社内担当者の通常の給与は支出枠に含めず、準備と実施の時間は別に予定へ入れます。

研修と目的 対象者・人数 回数 外部・社内の分担 費用の計算 担当
新任管理職が仕事の任せ方を学ぶ 新任管理職5人 外部講座を各1回 外部講座を受講し、社内で業務への適用を話し合う 5人×受講料A円 人事兼務者が申込、部門長が参加日を調整
社員が共通の業務手順を学ぶ 全社員80人 社内研修を年2回 社内担当者が説明し、教材を準備する 2回×教材・会場費B円 部門長が内容を決め、社内担当者が教材を準備
管理職が部下との仕事の進め方を学ぶ 管理職10人 外部講師による研修を年1回 外部講師が研修を行い、社内で仕事上の課題を整理する 1回×講師料C円+教材・会場費D円 人事兼務者が依頼内容を整理し、社長が支出を決める

金額の入れ方は、公開講座の受講料Aには主催者の案内を使い、外部講師の講師料Cは2社以上から見積もりを取ります。社内研修の教材・会場費Bは前年の実績から入れ、外部講師の研修で別に必要な教材・会場費Dも調べて入れます。

年間の支出枠は、表の式の合計(5人×A円+2回×B円+1回×C円+D円)で決めます。積み上げた合計が参考値から大きく離れたら(一例として、参考値の半分に満たない、または2倍を超える時)、対象者と回数を部門長ともう一度確かめるきっかけにし、参考値に合わせるためだけに削らないようにします。年度途中に予定が変わったときは、実施する研修と残額から年間枠を見直します。

対象者と回数を決める

まず各部署に、誰がどの仕事で学ぶ機会を必要としているかを聞きます。全員に共通する内容と、役割を持つ人に必要な内容を分けると、対象人数が決まります。同じ人が複数の研修に参加する場合は、それぞれの行に人数を入れます。全社員の実人数と、研修ごとの延べ参加人数は分けて扱います。

次に、同じ内容を何回実施するかを決めます。交代制などで全員が同じ日に集まれなければ、開催を分ける必要があり、教材や会場の費用が変わります。対象人数だけが増えるのか、開催回数も増えるのかを分けて書くと、金額を直しやすくなります。

社内講師が担う研修でも、準備の時間は仕事の予定に入れます。教材作成を誰が担当し、その間の通常業務をどう分担するかまで決めておけば、費用の数字と実施できる体制を一緒に検討できます。

外部と社内の費用を分ける

外部講座は、参加者ごとの受講料と、必要に応じた移動費や宿泊費を積み上げます。外部講師を招く研修は、講師への依頼に含まれる内容と、会場・教材などを会社が別に用意する範囲を分けます。内容が決まっていない段階の金額は仮置きとし、依頼先から条件が示されたら更新します。

社内研修は、教材や会場などの支出に加え、講師や準備担当者が使う時間を記録します。支出額が小さく見えても、担当者が通常業務と両立できるとは限りません。社内の人件費を金額として管理する会社では、既に給与として計上している費用との関係を経理担当者とそろえます。

社内の担当者が研修を行い、一部の内容だけ外部に依頼する形もあります。その場合は、同じ研修行の中で外部への支払いと社内の教材費を分けて記入します。外部と社内のどちらにするかで表を分断せず、一つの研修に必要な支出を合計できる形にします。

年間枠と担当を決める

社員30〜100人で人事を兼務する会社では、人事兼務者が表をまとめ、部門長が対象と参加日を調整し、社長が年間の支出枠を決めます。人事担当者がいる規模では、人事が各部門の希望と重複を整理します。

支出予定が会社の確保できる金額を上回る場合は、各研修を一律に削る前に、目的と対象者に戻ります。年度内に実施するもの、内容や回数を調整するもの、次の年度に回すものを決め、変更後の表をもう一度合計します。実施を先に延ばす場合は、対象者と部門長に予定の変更を伝えます。

実施後は、表の予定額の横に実際の支出を残します。人数の変更や会場費など、差が出た理由も一緒に書くと、次年度に同じ条件で見積もる際の材料になります。年度途中で新たな研修が必要になったときは、残額と既に予定した研修を照らし、追加の支出を決裁者に相談します。

予算を立てるときの注意点

参考値と比べる際は、自社の枠に何を足しているかを表に残します。外部講師の費用や会場費を別の部署が持つ場合も、どちらの枠に入れるかを決めて二重計上を防ぎます。

参加対象を決める際は、所属や雇用形態だけで学ぶ機会から外さず、担当する仕事と必要な内容に照らして決めます。研修の予定は業務時間や担当業務と合わせて調整し、参加する社員に目的と日程を伝えます。

人材開発支援助成金は厚生労働省の制度で、都道府県労働局に相談できます。支給を前提に予算の枠を組まず、利用する場合は条件を調べます。

研修会社への見積もり依頼に向けた条件の整理は社員研修会社の選び方で紹介しています。

まとめ

社員研修の年間予算は、公的調査の平均額を参考にしながら、対象者、回数、外部と社内の分担から必要な費用を積み上げて決めます。予算表に担当と支出の範囲も残し、実績を次の年度の計画に使いましょう。

来年度に予定している研修と、部署から届いた希望を伺い、どこに費用をかけるか、研修で何を扱うかの見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。

出典

  1. 支える主張令和6年度のOFF-JT費用について、費用を支出した企業の労働者1人当たり平均額。

    令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要厚生労働省・参照 2026-11-03
  2. 支える主張企業調査の対象、回答率と調査時期。

    令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します厚生労働省・参照 2026-11-03
  3. 支える主張人材開発支援助成金の制度と相談窓口。

    人材開発支援助成金厚生労働省・参照 2026-11-03
  4. 支える主張問い合わせの案内先。

    お問い合わせ株式会社Mario Rossi・参照 2026-11-03