この記事で分かること

  • 見積もりを依頼する前に社内で決める条件
  • 研修後の職場の支えと成果の見方の決め方
  • 提案と見積もりを同じ条件で比べる記入例

次の期の社員研修を任され、複数の研修会社に見積もりを頼む。各社の提案を同じ条件で比べられるよう、依頼前に社内で決めることを整理します。

決めるのは、対象者、変えたい行動、期間、予算の考え方、研修後の職場の支え、効果の見方の6項目です。全部を細かく確定できなくても、決まった点と相談したい点を分けて伝えると、各社の提案を読み比べやすくなります。

見積もり前に条件をそろえる目的

研修会社を選ぶときは、金額と講座名に加え、研修で扱う仕事と、その後に会社が引き受けることを見ます。見積もりの金額には、事前の打ち合わせ、教材、研修当日、実施後の報告など、会社ごとに異なる範囲が含まれます。含まれる仕事が違うまま総額を並べても、差の理由は分かりません。

まず自社が期待する変化と制約を整理し、同じ内容を各社に伝えます。提案には、講師の話を聞く時間、仕事に近い場面を使う演習、研修後の振り返りなど、異なる組み合わせがあります。自社の仕事で何を試せるかを軸に、その組み合わせと費用を見るための準備です。

研修後に職場で支える人を決める理由

厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」の事業所調査では、能力開発や人材育成に問題があると答えた事業所のうち、「指導する人材が不足している」が59.5%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%でした(複数回答。調査は2025年10月、常用労働者30人以上の7,194事業所が対象で、有効回答率は54.2%)。出典:令和7年度 調査結果の概要

研修会社が受け持つのは主に研修の場で、職場で指導する人と時間の不足は、社内で手当てする部分が大きくなります。依頼の前に、研修後に職場で相談を受ける人と、その時間を決めておきます。仕事の割り振りや判断する権限が課題に関係する場合は、会社側でも見直します。

依頼までの進め方

一例として、見積もりを依頼する前の2週間で、次の順に材料を集めます。日数は社内の予定に合わせて変えてください。

  1. 部門長と、研修で扱いたい仕事の場面と対象者を整理します。
  2. 受講できる時期と時間、予算の上限と内訳の希望を決めます。
  3. 研修後に職場で試す機会と、変化を見る方法を決めます。
  4. 6項目を依頼文にまとめ、各社に同じ条件と回答期限を伝えます。
  5. 提案を受けたら、内容と費用の範囲を並べ、違いと追加条件を聞きます。

依頼先の形は、公開講座(他社の受講者と一緒に受ける)、講師派遣(自社に講師を招く)、個社向け研修(自社の課題に合わせて組む)、eラーニング(各自が教材で学ぶ)に分かれます。対象者が数人なら公開講座も候補になり、自社の仕事の場面を題材にしたいなら個社向けが合います。下の6項目を決めると、どの形が合うかも絞れます。

社内で決める6項目

以下の人数・期間・回数は、依頼を考えるための一例です。

1. 対象者:誰が、どんな仕事をしているか

人数と役職に加え、担当業務や経験の幅を書きます。たとえば「営業部門の新任課長3人。うち1人は他社で管理職の経験がある」という具合です。異なる経験を持つ人が同じ研修に参加するなら、それぞれが扱う仕事を共有し、演習の難しさや進め方を提案してもらいます。

対象者が日々どの業務を担い、どの範囲を自分で決められるかも伝えます。受講者が不在になる間の業務の受け手も、日程を決める前に部門内で調整します。

2. 変えたい行動:どの場面で何をするか

「リーダーシップを高める」のようなテーマに、仕事の場面を添えます。たとえば「仕事を依頼するときに、期限と完成の条件を相手とすり合わせる」と書けば、研修会社は練習の内容を考えられます。

状況をよく知る部門長や受講予定者から、困りやすい場面と、すでにうまく進んでいる場面を聞きます。本人たちが工夫していることも伝えると、今ある仕事の進め方を踏まえた提案になります。

3. 期間:実施日と、仕事を離れられる時間

希望する実施時期と、参加者が仕事を離れられる時間を伝えます。「来期の第1四半期に半日を2回、各回の間を1か月空ける」とすれば、研修と実務をどのようにつなぐかを相談できます。繁忙期、交代勤務、会場への移動も考慮します。

開催時間のほか、事前課題にかかる時間や、実施後の振り返りに使う時間も提案してもらいます。参加者だけでなく、日程を調整する人や指導役にも予定を共有します。

4. 予算:上限と、見積もりに含める範囲

厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」の企業調査では、令和6年度の1年間にOFF-JT(日常の仕事を離れて行う教育訓練)に費用を支出した企業の、労働者1人当たりの平均額は2.0万円でした(前回の調査では1.5万円)。費用を支出した企業についての労働者1人当たりの平均で、受講者1人当たりの研修会社の料金ではありません。出典:令和7年度 調査結果の概要・図4

使い方の一例として、この平均額を仮に社員50人の会社に当てはめると、2.0万円×50人で年に約100万円をOFF-JT全体に使う計算になります。自社の年間のOFF-JT費用を同じように出し、そのうち今回の研修に何割を充てるかを話し合うと、上限を決めやすくなります。

上限が決まらない時は、たとえば半日1回と半日2回の2つの規模で見積もりを頼み、内容と総額を見て決めます。税を含む上限と対象範囲は、決まった時点で各社に同じように伝えます。

講師料、教材、事前打ち合わせ、会場、交通費、オンライン配信、報告書、研修後の面談について、それぞれ「基本料金に含むか、別料金か、不要なら外せるか」を尋ねます。人数の変更、日程変更、追加の打ち合わせで費用が増える条件と、税・交通費を含めた総額も聞きます。

人材開発支援助成金は厚生労働省の制度で、都道府県労働局に相談できます。利用を考える場合は支給を前提にせず、対象条件と申請期限を調べます。

5. 研修後の職場の支え:誰が何を用意するか

研修で学んだことを試す仕事、相談相手、そのために空ける時間を決めます。研修後の1か月間に課長が仕事の依頼を行い、部門長がその準備について相談を受ける予定を組みます。相手となる社員にも、仕事の目的や進め方を伝えます。

各社への依頼文は、社員30〜100人の会社なら人事を兼ねる人が、人事の担当者がいる会社なら人事がまとめます。どちらの規模でも、研修後の相談の時間を業務の中に空けるのは部門長と指導役で、予算の上限を決めるのは社長です。

6. 効果の見方:いつ、何を見て判断するか

研修直後の感想に加え、仕事で何を試したか、仕事の進め方に変化があったかを見る方法を決めます。研修の1か月後に受講者と部門長が、依頼時に期限と完成の条件を話し合えた場面と、難しかった場面を振り返ります。

振り返りの目的と、記録を誰が見るかは事前に伝えます。仕事の結果には業務量や権限なども関わるため、数値の増減だけを研修や個人の評価に結び付けません。研修会社には、実施後にどんな報告を受け取れるかも尋ねます。

提案と見積もりを比べる記入例

各社への依頼には、6項目のほか、提案の回答期限と、見積もりに含める費用を記します。以下は架空の依頼を比べるための記入例です。社名や金額を置かず、同じ条件で何を見るかを示しています。

比べる項目 自社から伝える条件の一例 提案で見ること 差があれば聞くこと
対象者と行動 新任課長3人。仕事の依頼時に期限と完成の条件をすり合わせる その場面を使う演習の内容と、参加者それぞれへの関わり方 経験の違いを踏まえ、演習をどう調整するか
期間と職場の支え 半日2回、間隔は1か月。部門長が実務の相談を受ける 研修間に試す仕事と、部門長への説明の有無 社内で用意する時間や資料は何か
予算と効果の見方 税込みの上限内で依頼。1か月後に受講者と部門長が振り返る 教材・交通費・報告に含まれる範囲と、振り返りへの支援 追加費用が生じる条件と、報告の内容は何か

たとえば一方の提案に研修後の報告が含まれ、もう一方には記載がない場合、報告の有無と内容を尋ねます。双方に必要な範囲を伝え、追加費用があるなら加えた金額で比べます。時間や費用に収まらないときは、外す項目と社内で担う項目を社内で決めてから、各社に同じ変更を伝えます。

費用の回答は「含む」「別料金」「不要なら削除可」「要確認」で各社ごとに表へ書き、別料金は税・交通費を含めた総額に加えて比べます。提案の書き方が違えば、空欄を推測で埋めずに質問します。同じ費用の中でも、準備にかける時間や実施後の支援に差があるかもしれません。条件を伝えたうえで、各社がどこを重視し、その理由をどう説明するかを読みます。

選ぶときの注意点

実施実績や講師の経歴を見るときは、自社の対象者や仕事の場面と、提案された内容がどうつながるかを尋ねます。実績の件数だけで選ばず、担当する講師、当日の進め方、事前に共有する情報の範囲を話し合います。

受講者を問題として扱うために個人情報を集めません。受講者の個人情報や職場の具体的な事例を渡す場合は、目的、閲覧する人、保存と削除の扱いを依頼先と決め、社内の規程に沿って共有します。契約前には、実施範囲、支払条件、日程変更時の扱い、教材の利用範囲も書面で読みます。

研修を自社の仕事に合わせる考え方は、オーダーメイド研修とはでも紹介しています。

まとめ

社員研修会社を選ぶ前に、対象者、変えたい行動、期間、予算、職場の支え、効果の見方を整理します。決まっていない項目は相談事項として伝え、各社の提案を同じ条件で比べましょう。

研修や育成の進め方について、研修で変えたい仕事の場面と各社の見積もりを伺い、見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。

出典

  1. 支える主張常用労働者30人以上の企業7,452(有効回答率52.6%)・事業所7,194(同54.2%)に2025年10月に実施。

    令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します厚生労働省・参照 2026-11-03
  2. 支える主張OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額(令和6年度1年間に費用を支出した企業の平均)は2.0万円(前回1.5万円)。人材育成に問題がある事業所のうち、指導する人材が不足している59.5%、人材育成を行う時間がない45.5%。

    令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要厚生労働省・参照 2026-11-03
  3. 支える主張人材開発支援助成金の制度案内。

    人材開発支援助成金厚生労働省・参照 2026-11-03
  4. 支える主張問い合わせの案内先。

    お問い合わせ株式会社Mario Rossi・参照 2026-11-03