この記事で分かること
- 研修の企画から実施後までの社内外の分け方
- 工程ごとの利点と負担の比べ方
- 担当者の時間や代役を整理する判断表の例
研修会社から見積もりが届き、社内で作れば費用を抑えられるかもしれないと考えている。けれど、講師を頼める人は忙しく、教材をいつ作るかも決まっていない。そんなときは、研修全体を一度に内製化する前に、工程ごとの担当と時間を比べてみましょう。
研修の内製化とは
研修の内製化は、企画、教材、講師、運営、実施後に効果を確かめる仕事を自社で担うことです。たとえば、社内で必要な仕事を選び、講師は外部に頼む方法もあります。この記事では、通常の仕事を離れて行う研修を中心に、各工程をどこまで社内で持つか考えます。
工程ごとに比べる理由
自社で担うと、日々の業務で使う資料や判断を教材に取り入れやすくなります。一方、準備や更新の時間を確保できなければ、担当者の通常業務に負担が重なります。外部に頼む場合は専門知識や既存教材を使えますが、自社の業務に合わせるための説明と調整が必要です。
労働政策研究・研修機構の2024年の企業調査では、2023年度に業務命令によるOFF-JTを実施した1,932社のうち、実施主体として「自社で行った」は30.8%、「民間教育訓練機関」は31.8%でした。自社では各工程の担当を分け、必要な部分に外部を使えるか比べてみましょう。調査は複数回答で、自社と外部を併用した回答もあり得ます。企画から更新までの全工程を内製した割合を示す数字ではありません。
進め方:目的と条件を決めてから分担する
まず、研修後に受講者が行う仕事を一つ決めます。次に、対象人数と実施頻度、使える社内の時間を出し、次の表で各工程を比べます。外部の見積もりは、教材、打ち合わせ、実施後の報告が含まれるかをそろえて見ます。
工程別のメリット・デメリット
| 工程 | 内製の利点と負担 | 外部に頼む利点と負担 | 選ぶ目安の一例 |
|---|---|---|---|
| 企画 | 実際の仕事に合わせやすい。目的や対象を決める時間が要る | 設計の知見を使える。社内の課題を説明する時間が要る | 同じ仕事を毎月教えるなら社内で企画し、初めて扱う専門分野は外部の助言を使う |
| 教材 | 社内の手順を直接使える。変更のたびに改訂が要る | 既存教材を使える。自社用の調整や利用条件の把握が要る | 社内規程は社内で用意し、共通知識は外部教材を検討する |
| 講師 | 社内の具体例を話せる。準備と練習の時間が要る | 専門家に教え方を任せられる。事例や対象者の説明が要る | 年1回・受講5人で講師の準備時間が取れなければ外部を検討する |
| 運営 | 社内の日程に合わせやすい。案内や出欠の仕事が残る | 会場や案内を任せられる場合がある。依頼範囲の調整が要る | 毎月入社があり日程が読めるなら社内で定例化する |
| 効果の確認 | 職場で仕事に使えたか見られる。上司の時間が要る | 外部の視点で演習結果を整理できる。職場の様子は社内から伝える必要がある | 外部講師の研修でも、職場での振り返りは部門長が持つ |
表の条件は判断を始めるための一例です。年1回でも自社固有の安全手順を扱うなら社内の実務担当者が関わり、毎月実施していても専門性や人手が足りなければ外部に頼みます。
担当・時間・代役・更新条件を書いた判断表
次は、毎月入社する人に社内の受注手順を教える場合の記入例です。時間は実績値ではなく、半日の研修を初めて準備する場合の仮の見積もりです。実際に担当者が確保できる時間と照らして使います。
| 工程 | 今回の担当と選択 | 準備・実施に使う時間の一例 | 代役 | 更新する条件 |
|---|---|---|---|---|
| 企画 | 人事兼務の総務担当が内製。部門長が到達点を決める | 初回2時間、次回以降30分 | 部門長 | 任せる仕事が変わったとき |
| 教材 | 受注担当が手順を用意し、外部教材の共通部分と組み合わせる | 初回4時間、次回以降30分 | 別の受注担当 | 受注手順や教材の利用条件が変わったとき |
| 講師 | 共通部分は外部講師、社内手順は受注担当 | 社内担当は打ち合わせ1時間、説明30分 | 部門長 | 手順が変わったとき、外部講師とは次回内容を相談 |
| 運営 | 総務担当が内製 | 案内・会場準備に毎回1時間 | 総務の別担当 | 日程や会場が変わったとき |
| 効果の確認 | 部門長が内製。本人と受注の練習結果を振り返る | 研修2週間後に30分 | 部門長が指定する指導役 | 目標とする仕事が変わったとき |
初回は、表の時間を合計すると社内で9時間です。次回以降の時間は、講師の打ち合わせと説明を同じだけ行う場合、合計4時間です。どちらも実施時間のうち外部講師が担当する分は含みません。講師を内製する案も、教材準備と練習の時間を同じ範囲で見積もり、通常業務との両立を比べます。
社員30〜100人の会社で人事を兼務している場合は、まず社長が研修に使う時間を決めます。部門長は研修後に任せる仕事と職場での振り返りを持ち、人事を兼ねる担当者が日程と外部との連絡をまとめます。社内手順は指導役が説明し、社内講師は準備分の通常業務を減らして時間を確保します。
注意点
法令や安全に関わる教材は、担当部門や専門家に内容を見てもらいます。顧客情報や個人情報を教材に使う場合は、共有できる範囲を決めます。研修後の振り返りで、権限や業務分担の問題が見つかったときは、研修だけで解決しようとせず、部門の責任者が扱います。
まとめ
研修の内製化では、各工程を誰が担うかを決めます。教材、講師、運営、更新までの仕事と時間を書き出し、社内の知識を使う部分と外部の支援が必要な部分を選びましょう。
研修や育成の進め方について、任せたい仕事を伺い、見立てをお返しします。お問い合わせはオンラインで受け付けます。
出典
- 人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)(労働政策研究・研修機構、2025年、54頁・図表2-5-12)
出典
支える主張2023年度にOFF-JTを実施した企業の実施主体。54頁、図表2-5-12。
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